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「日本人のアイデンティティ持つ国際人を育てる㊦」週刊教育資料
幼小一体の校舎で連携進む
LCA国際小学校には、附属プリスクール(幼稚園)があり、以前から保育の100%を英語で行う方式をとっている。本年度から一つの敷地の中でプリスクールと小学校の園舎・校舎が一体となったが、それまでは幼稚園、小学校低学年、小学校高学年で、距離は近いながらも別々の校舎という環境だった。
幼稚園は、登園後自分でコーナーを選んで遊ぶフリープレーで始まり、英語の単語や表現を学んだり、ディスカッションやショウ&テル、絵本の読み聞かせをしたりするサークルタイム。日によって理科や算数などの教 科を五感を使いながら楽しく学ぶ時間、広い園庭での体育など楽しい活動が盛りだくさん。
希望者には延長保育も充実し ていて、クラブ活動のように歌やダンス、スポーツ、工作、料理などの授業を行っている。3カ所での保育・授業の場合は、小学校と幼稚園の教員同士 が互いの授業を見る機会はあっ たが、1カ所にまとまったことで、より指導の中味について連携する体制ができていった。
例えば、幼稚園では英語で討論したり、時にはディベートに近い活動まで園児が行うことがある。特に年長の園児たちが成長してきた姿を、小学校でさらに伸ばしていくという視点を重視して、小学校教師がプリスクールの授業・保育を見るようにしている。まだまだ課題はあるが、私としては幼稚園で育ってきた力を小学校でどう伸ばすかを教員に考えてほしいと願っている。
考えたことはやってみる子に
幼稚園や小学校では、いろいろなことについて自分の考えを持つこと、そしてやってみたいことがあれば実現していく意欲を持つことを重視している。 東日本大震災の後、小学校の有志の児童4人が校長室にやってきて、「自分たちはペットボトルのキャップなどを集めて被災地の支援をしたい」と相談に来た。
そこで私は、ペットボトルのキャップを集める活動もいいけれど、もっと現地の人の顔が見える活動をしてみたらどうかと提案した。その後、実際に被災地の学校の子供たちと交流する活動が実現することとなり今も続いている。4人の子供たちの提案がなかったら交流はなかったのだ。その時の子供たちが今春卒業する学年になった。
私は月に1回、全校児童の前で「朝礼」ではなく「アッセン ブリー」の機会を作って話をしている。そこでこの被災地の 学校との交流の話をしたところ、その後に3年生の児童が校長室に1人でやってきて「私は今、 目が見えない人の不便さを体験する学習をしているけれど、自分だけでなく全校の子供も学んだほうがいいと思う」と話した。そこで、友だちを誘って児童会に提案したらどうか、と話したところ、その児童はその通り に活動して全校で学ぶ活動が実現することとなった。
校長としては1年から6年の間に月1回、合計で72回の「ア ッセンブリー」という「授業」 ができるので、①夢を持つこと②その夢に向かって実現していくこと―を子供たちに伝えたいという思いで語ってきたが、この校長の思いが子供たちにも確 実に伝わっているなと感じることができた。
卒業式の時に保護者からも「英語や勉強がここまでできるようになりました」という感謝よりも「校長先生 の人生を見せていただき、感じさせていただいた」ことを感謝されることがあった。これは、私立学校の創設者である私の思いをしっかりと受け止めてもらえた言葉であったと思う。
また、本校のホームページは私個人のFacebookなどで、時々自分の思いや考えを保護者だけでなく広く社会に発信するようにしている。
行政との連携が広がる
株式会社が運営する私立小学校ということで、本校が設立されるまでは、特区制度の活用などでさまざまな苦労もあった。 前回(1月18日付1372号)述べたように、地元の自治体の職員の定年退職者で教育に意 欲的な人が本校の運営に加わったことで、自然に本校の教育内容などが地元の教育委員会などにも情報として伝わっていったようだ。
こうした本校の教育内容への理解が広がることが契機となって、平成27年度に相模原市の英語のキャンプ運営の委託を初めて弊社が受けることになった。 現在、全国でグローバル化の時代に対応できる実践的な英語力や広く考える力を持った人材を育成することが課題になっているが、本校でもイマージョン教育のノウハウを含めて、行政との連携が進むようになったのは、設立当初から思えば隔世の感がある。
また、私自身は公立小学校の教員を退職して、自分が理想とする教育を私塾という形で実現してきた。先日、当時の同僚の教員で教育委員会のOBでも ある人と会う機会があった。その人は公立学校の現場や教育委員会などで活躍された人で、その指導力を本校のような私立学校の若手教員にも学ばせたいと感じ研修などでの協力をお願いした。
本校の外国人教員が日本の教育委員会などが主催する外部の研修を受けても、現状では日本語で話す内容が十分に理解できていない面があるが、指導主事のOBに本校に来てもらって、同時通訳も付けて本校で授業の研修を行うと、その効果は大きいことに気付いた。やはり、公立学校で永年にわたって培ってきた指導のプロであるベテラン教員から学ぶことは多いのであ る。
本校の教員も英語教育やイマージョン教育などの経験は積み重ねつつあるが、特に教科指導や学級経営などの面で、公立学校のベテランと言われる教員のレベルから見ると課題もある。 校長としては、例えば本校の外国人の教員の力量をさらに高めて、教育委員会の現役の指導主事に授業を見てもらって、「いい授業だ」と評価されるようになることを目標にしたいと考えている。
現場で生まれた英会話教材
(株)エル・シー・エーは、LCA国際小学校の運営、附属プリスクールの運営のほか土曜日に行う英語教育プログラム、 スプリングスクール・サマースクールなどのビジターコースといった教育事業、英語テキスト教材の出版や講演、英語教師研修、ALT派遣、教育コンサルタントなどの教育サポート事業を通して、日本の学校における英語教育に貢献したいと考えている。
特に、本校の教育の中で生まれた英会話テキスト教材は、「発話力を鍛え、会話力をつける」ことをコンセプトに、生活する環境を学校や家庭に特定して、学校で英語指導をしやすくする工夫を盛り込んだ。どのような 会話力を年間で付けていくのかを明確にしている点に特徴がある。
また「メトロラーニング」というメトロノームのリズムに合わせて単語や基本的な文章を楽しく繰り返すことで会話力をトレーニングするドリル教材な ども開発してきた。これは幼児から大人まで幅広い層を対象にしたもので、本校でも日本人教員が使ったところ、授業外でも英語会話が自然にできるようになるなど効果が高かった。
このような教材提供や、英語 キャンプ・英語村などのソフト面での教育内容づくりの成果を広くアピールしていきたいと考えている。
<参考>
▼LCA国際小学校
https://lca-elementary.com/
▼教材販売元:エデューレコミュニケーションズ
https://com.edure.co.jp/business/education
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出典:教育公論社『週刊教育資料』2016年1月25日号