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学園長ブログ

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人間の未来 AIの未来 羽生善治・山中伸弥

2020.10.12

人間の棋士は「じゃあ持久戦で行こう」とか「急戦調で攻めていこう」といった方針、方向性を持って考えていくので、指し手にそれが反映されるんですね。AIは常に一手ずつリセットして考えていくので、どういう流れでその局面にきたのかは、まったく関係ありません。つまり、そこには継続性とか一貫性というものがないわけです。

 人間が指す手は 人間の持っている一種の防衛本能とか生存本能が、そういう手を選ぶのを避けてきたからではないかと私は思っています。(羽生)

 ソフトの開発者に「ランダムな変数をどんどん入れたら、AIにも創造的な仕事ができるのではないですか」と聞いたところ、ランダムな変数を少し入れたくらいでは、私たちの言う真の想像には全く結びつかないということでした。だから、これからAIの開発が進んでいっても、なかなか人間的な創造をするのは難しいのではないかと言われています。(羽生)

 AIはデータに基づいて人々が好むもの、選ぶものを予測するのは得意ですが、とんでもないものを好きになる、意外性を愛する人間の可能性は予測できないはずです。それこそ人間にしかできない創造的行為です。(羽生)

 アイディアや発想、ひらめきを得るときには、ものすごく考えて考えてそこから生み出されるものもあれば、あるいはちょっと空白というか、熟考から離れてぼんやりとしているときにパッと思いつくこともありますね。眠っていたものが突然、目覚めるように。それは眠らせていた機能が活性化された瞬間かもしれません。

 ということは、ひらめきを得るためには、インプットばかりではなく、それを整理したり無駄なものをそぎ落としたりする時間が必要なのかなとは思っています。

 アイディアはどこから生まれるか

① 天才だから

②実験をしていて予想していなかったことが起こったときに、それに食いつく。

③自分も他人もみんな「これができたら素晴らしい」と考えているんだけれども、「無理だろう」とあきらめて、誰もやっていないことに敢えてチャレンジする (山中)

 知識は当然必要なのだけれども、でも時に邪魔をすることもある。知識が多すぎると「これはできるはずがない。絶対に失敗する」と怖くなるんですね。(山中)

 頭の中にたくさんの情報を詰め込んでしまうと、先入観や固定観念ができてしまって、これまでにまったくなかったもの、既成概念を破壊するようなことが思い浮かばなくなってしまう。それはよくないな、と思うことが多いですね。(羽生)

 だから失敗を経験することなく、教科書に書いてあることをそのまま答えたら目的の大学に入れるという環境で育ってきた子が大半です。そんな子がいきなり研究の世界に入ってきて、「教科書に書いてあること、先生が言うことは信じるな」とか、「実験結果で予想外のことが起こった時こそチャンスだ」と言われても、それは簡単には受け入れられないですよ。(山中)

直線型:一度目標を決めたら最後までやり通す生き方を好む

回旋型:ここかと思えばまたあちらと、自分の興味に応じて、ある意味フレキシブルにクルクル回って移り変わることができる。

 (直線型と回旋型が両方日本にもいると良いのですが、)受験をメインとする教育だと、なかなか回旋型は生まれません。(山中)

 若いころだと無駄だと切り捨ててきたものが、実は重要なんじゃないかと見直すようになりました。意味がなさそうなことに実は意味があるはずだとか、すぐに結果がでるわけではないけれども、小さな積み重ねを日々行うことで新しいアイディアやひらめきが生まれてくるのではないか。(羽生)

 あまり根を詰めて真面目にやりすぎないほうがいいのかな、と。結果を求めるよりもプロセスの中に楽しみを見いだせるかどうか、やっていること自体に充実感を感じるかどうか、そのほうがむしろ大事だと思います。(羽生)