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学園長ブログ

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作文の書き方と記憶のメカニズム

2011.10.11

一般的な記憶のメカニズムは、感覚記憶→短期記憶→長期記憶であるとなっているようだ。感覚記憶とは感覚器官から入ってきた情報で必要なものを短期記憶に送って消えてしまうように書いてある。「ア」「ウ」という音を「合う」なのか「会う」なのかと判断し、意味を持たせて短期記憶に残すということだろう。短期記憶も短期の貯蔵しか出来ないので、反復するなどの学習をして長期記憶に残す。いわゆる「勉強ができるようになる」という意味での記憶はそれで説明がつくのかもしれない。
しかし、私たちは一度行った場所に偶然行くと、前に来たことがあると思うことがよくある。映像が脳に残っていたとしか思えない。感覚記憶の中でも聴覚の5000倍あると言われる聴覚細胞は見たことを全て脳に残しているのではないか。きっかけさえあればその映像を呼び起こすことができるのだ。
学問的なことは学者さんにまかせるとして、私がここで取り上げたいのは作文を書く時の脳の使い方である。感覚記憶から短期記憶に移行する段階で言語化するとその情報は圧倒的に少なくなってしまうという。だから言語を使って過去を思い出そうとすると、きわめて少ない情報しか思い出せないことになる。「その時どう思ったの?」と質問されても、その時には気持ちを言葉にしては残していない。言語で思い出して作文を書くと、情報が少なく個性もない薄っぺらな表現になりがちなのはこのためではないだろうか。映像で過去を思い出し、映像を後から言葉で表現する方法を使うと、表現できる情報が比べ物にならない程多いので、厚みのある豊かな表現が可能になる。私が「見たこと」にこだわって作文を書くことを勧めるのはそのためである。
見たこと作文については拙著「100字日記で勉強のできる子を育てる」を参照してください。